ドラッグストアや薬局・薬店で購入できる痛みや炎症を抑える貼り薬は
一般的には湿布薬と呼ばれています。
一方、医師の診断のもと処方される医療用医薬品においては
パップ剤やテープ剤と定義されています。
ここでは医療用医薬品であるパップ剤やテープ剤に関する様々な疑問などについて
Q&A方式で分かりやすくお答えいたします。

鎮痛消炎貼付剤(ちんつうしょうえんちょうふざい)とはどのようなものですか?

鎮痛消炎貼付剤とは、局所の痛みや炎症を抑える効果があるパップ剤やテープ剤のことで、医師によって処方 され、患者さんの治療に使われている医療用医薬品です。

医師が患者さんの病状に合わせて、薬を出すこと。

[コラム]
パップ剤の歴史について
知ろう!!

パップ剤は一般的には湿布薬とも呼ばれており、ぼってりと厚いタイプです。また、薄いタイプの「テープ剤(プラスター剤)」も湿布薬と呼ばれることがあります。

参考〉Q2:パップ剤とテープ剤の違い

パップ剤の歴史は紀元前1000年頃までに遡ります。当時の粘土板に現在の英語でパップ剤を意味する「Poultice」「Plaster」の言葉が刻まれています。イエス・キリストよりも早く生まれていたということは、もしかしたらキリストもパップ剤を使っていたかもしれません。

日本では平安時代に著された現存する我が国最古の医学書である「医心方」に“生薬を細かく割り、竹簡(ちっかん)で覆ったものを患部に貼ると傷が癒える”との記載が残されており、これがパップ剤に該当すると考えられています。明治時代から大正時代の民間療法をまとめた本「家庭における実際的看護の秘訣(通称:赤本)」の中では、「皮膚に貼る」療法が罨法(あんぽう)やパップ剤としていくつも紹介されています。

大正時代から昭和初期にはアメリカで泥状の薬剤が開発されています。布の上に塗って延ばして貼った後に油紙で覆い、包帯をして・・・これを一日に数回繰り返すという手間のかかるものでした。ただ泥状パップ剤は日本薬局方にも「カオリンパップ」という名称で掲載されるまでになりました。

1970年代になり布(不織布[ふしょくふ])と薬剤(膏体[こうたい])が一体化して簡単に使用できる現在のような成形パップ剤が日本で誕生し、第12改正日本薬局方には、成形パップ剤(せいけいぱっぷざい)の解説が掲載されるまでになったのです。

1980年代にはいると、非ステロイド性抗炎症薬のパップ剤が承認され、それ以後、全身作用型、局所作用型の様々なテープ剤などが開発されており、目的に応じて広く治療に使用されるようになり現在に至っています。

私たち日本人には特に馴染みの深いパップ剤やテープ剤の歴史について、少しはお分かりいただけたでしょうか?医師、薬剤師などからの説明を守っていただくことで、パップ剤やテープ剤と上手に付き合っていただき、健康ライフを送っていただきたいものです。

パップ剤とテープ剤の違いを教えてください。

パップ剤、テープ剤はどちらも支持体※1・膏体(粘着剤+薬物)※2・ライナー(剥離紙[はくりし])※3の3つの層からできています。

  • パップ剤は、水溶性高分子を主な基剤成分とした膏体が塗布された貼付剤です。また、膏体に厚みがあり、多量の水分を保有することで、患部の冷却作用を有する製剤です。
  • テープ剤は、親油性高分子(しんゆせいこうぶんし)を主な基剤成分とした膏体が塗布された貼付剤です。また、膏体が薄くつくられており、伸縮性や粘着性が高く、ひじやひざなどの可動部位にもフィットする製剤です。

パップ剤の概略図

テープ剤の概略図



支持体は、不織布、ニット、プラスチックフィルムなどが用いられています。

膏体(粘着剤+薬物)は、有効成分を含有し、適度な粘着力・凝集力を有する鎮痛消炎貼付剤の主要構成部分です。

ライナー(剥離紙)は、ポリプロピレン、ポリエチレン、セロファン、ポリエステル、紙などが用いられています。

パップ剤やテープ剤は、どれくらい処方され使われていますか?

パップ剤やテープ剤は年間、約40億枚処方され、患者さんの治療に使われています。使われた全てのパップ剤やテープ剤を並べると、地球約14.1周分の長さとなります

パップ剤、テープ剤の1枚当たりの大きさを10cm×14cmとして長尺方向に並べた場合の長さ。

参照:NDBオープンデータ/外用_性年齢別薬効分類別(2020/4-2021/3)

[コラム]
鎮痛消炎貼付剤の
医療上の必要性

消炎鎮痛を目的とした鎮痛消炎貼付剤であるパップ剤、テープ剤は、我が国特有の製剤技術によりもたらされた世界に誇れる有用な医薬品です。

患部へ直接の効果が期待でき、全身性の副作用が起こりにくいことなどから、高齢者をはじめとする多くの患者さんの痛みを治療する医薬品として、長年にわたり医療現場で広く使用され国民の健康維持に貢献している欠くことができない基礎的な医薬品として位置付けられています。

そのため、今後も将来にわたり、国民皆保険制度の下、医療用医薬品としてなくてはならない医療上必要な医薬品なのです。

パップ剤やテープ剤は、なぜ貼るだけで効果があるのですか?

パップ剤やテープ剤は、痛みがある部位に直接貼ることで皮膚を通して有効成分がからだの中に浸透し、効果を発揮します。

人の皮膚には本来からだを守るため、水や異物を通さないバリア機能が備わっていることを皆さんもご存知だと思います。パップ剤やテープ剤は、経皮吸収技術によってそのバリア機能を突破し、有効成分が痛みのある部位まで届き、痛みや炎症を抑えます。

[コラム]
全身性製剤の
可能性

医療用外用貼付剤には大きく分けて2つのタイプがあります。貼付部位に直接作用する「局所性製剤(パップ剤やテープ剤)」全身に作用する「全身性製剤」があります。

局所性製剤(パップ剤やテープ剤)は、皮膚から組織中に薬物が移行することで貼った部位に効果を発揮します。患部への直接効果が期待できる、使用が簡便、全身性の副作用が起こりにくいなどのメリットがあります。

全身性製剤は、薬物が皮膚組織の毛細血管に移行し、全身血流を循環することで効果を発揮します。この技術を応用すれば、これまで経口剤や注射剤であった薬物を貼付剤に置き換えることができます。貼付剤に置き換えることのメリットとして、例えば薬物の血中濃度を安定的に長時間維持できる。消化管での副作用を回避できる。小児や高齢者などの経口摂取(けいこうせっしゅ)が困難な場合や、介護などで服薬確認が必要な患者さんの服薬コンプライアンスの改善ができる。副作用が生じた際に、はがすだけで中断できる。飲水を必要とせず、いつでも服用できることなどが挙げられます。

現在では、喘息治療薬、狭心症治療薬、更年期治療薬、認知症治療薬、アレルギー性鼻炎治療薬などの全身性製剤が医療現場において、多くの患者さんの新たな治療の選択肢として貢献しています。今後も、貼付剤が患者さんのアンメットメディカルニーズに応える新たな治療の選択肢としてお役に立てるよう、日々研究開発が進められています。

パップ剤やテープ剤のライナー(はがすフィルム)は、なぜ
いろいろな形があるのですか?

パップ剤やテープ剤のライナーを簡単にはがし、患部に貼りやすくするためです。パップ剤やテープ剤は、きちんと貼ることで皮膚から薬を吸収させ、医薬品として期待される効果を発揮します。

パップ剤やテープ剤は、どのように作られているのですか?

パップ剤やテープ剤は概ね以下の工程で製造されます。

パップ剤やテープ剤を使用する時に、どのような点に注意すればいいですか?

パップ剤やテープ剤は、皮膚にしっかり貼付することで、その効果を発揮する医薬品です。そのため、使用の際には、きちんと貼れるように、皮膚表面の汗や汚れなどをきれいに拭き取り、患部を清潔にして貼付してください。

パップ剤やテープ剤を使用する場合には、医師・薬剤師の指示に従い、適正に使用してください。

パップ剤やテープ剤は、どのように保管すればいいですか?

パップ剤やテープ剤は、開封した後には開封口をしっかり閉め 、直射日光が当たる場所や高温・多湿な場所を避けて保管してください。

なお、多くの場合、パップ剤やテープ剤が入っている袋(薬袋)の裏面に保管上の注意が記載されておりますので、確認してください。

治療が終わった後に使わなくなったパップ剤やテープ剤は、どうすればいいですか?

治療が終わり、パップ剤やテープ剤が残った場合は、決して他の人に譲り渡したり、使わせたりしないでください。

もし仮に、パップ剤やテープ剤が手元に残っている場合には、医師・薬剤師へ伝えてください。

処方された薬は医師が患者さんの状態を総合的に判断し、最適な治療薬として選んだものです。他人に譲り渡した場合、同じ効果が得られないことや重大な健康被害が生じるおそれもあることから、処方された患者さん以外は決して使わない、使わせないようにしてください。